目次
住宅ローン金利が決まる背景
住宅ローン金利を予測する前に、住宅ローンの金利というのはどういう理由で決まってくるのか?をおさらいしておきたいと思います。
住宅ローン金利は国債金利に比例する
- 10年以上の固定金利 → 10年もの国債金利(長期金利)に連動
- 変動金利・短期の固定金利 → 短期プライムレートに連動
します。「短期プライムレート」とは、銀行が企業に融資する上で、優良企業に適用する最も優遇された金利のうち、1年以内の短期間で貸し出す際の金利のことを言います。この短期プライムレートは日銀が民間銀行へ貸し付けをする金利「政策金利」に連動するのです。
これを説明するには銀行のビジネスモデルから知る必要があります。
銀行のビジネスモデル
低金利でお金を調達 → 高金利でお金を貸付 → 利ザヤが収益
というのが銀行や金融機関のビジネスモデルです。預金や日銀からの借入によって、資金を調達してカードローンや住宅ローンなど高い金利で貸し付けることによって、その金利の差が銀行の収益となるのです。
住宅ローンは住宅という担保があるため、仮に返済が滞っても担保を売却することによって、ローンで貸したお金の回収ができるので、比較的貸し倒れリスクの少ないローンとして、低金利で銀行はサービス提供できるのです。
10年以上の固定金利 → 10年もの国債金利(長期金利)に連動する理由
日本国債というのは、日本国の発行する債券です。 国債の発行は、法律で定められた発行根拠に基づいて行われていて、日本という国が存在する以上戻ってくる安全な投資先なのです。そのため、銀行が考えるのは、住宅ローン金利が国債よりも高い金利でないと、国債に回した方が利回りがいいのだから意味がないということなのです。10年もの国債金利(長期金利)に0.5%~1.0%前後の銀行の利ザヤを載せた金利を10年固定金利として提供する形になっているのです。そのため、国債金利が上昇すればそれに0.5%~1.0%前後上乗せしているだけなので、住宅ローン金利も上昇するということになるのです。
変動金利・短期の固定金利 → 短期プライムレートに連動する理由
短期プライムレートは政策金利(日銀が民間銀行に融資する金利)に連動します。政策金利が低金利であれば、銀行は低金利で資金調達できることになり、それに0.5%~1.0%前後上乗せした金利で企業へ融資することが可能になるからです。政策金利は政府や日銀の意向にそって決定されるのですが、ここ10数年以上はゼロ金利政策と言って、企業への融資を活性化させるために0.1%前後の金利になっているのです。低金利で民間銀行にお金を融資することで積極的に企業へ融資してもらい、経済活動を活性化させる狙いなのです。結果として、変動金利も0.5%~1.0%という超低金利状態が続く形になっているのです。景気が悪い状態であれば、政府は政策金利を上げることができないため、変動金利は低金利の状態が維持されることになります。
2016年住宅ローン金利はこの要因が影響する!
中国バブルの崩壊と世界同時株安
中国はGDP成長率が7%と計画通りに成長したと発表しました。しかし、これが架空の数字であることは誰もが知っていることです。実際に、ごまかしにくいと言われている「銀行の中長期貸出残高・電力消費量・鉄道貨物輸送量」も2015年7月では前年同月比0.3%増とほぼ成長が止まったことを示しているのです。
実際に2015年8月11日に中国人民銀行(中央銀行)が人民元の切り下げを実施しました。これを受けて世界の投資家は「政府もヤバいと思ったんだろ。中国経済の崩壊は近い!」と考えて、資本を中国から引き揚げ始めたのです。これが連鎖的に世界の株式市場に影響を与えて、世界同時株安という状態に発展してしまいました。日本株も例外ではなく、20,000円を超えて順調に推移していた株価も、18,000円を割る形になってしまったのです。
では、中国経済バブルの崩壊がなぜ住宅ローンに影響するのか?というと・・・
世界的に経済が低迷すると投資家は資産を安全資産と呼ばれるものに移行します。不況でも影響がないものに一時的に非難するのです。リーマンショックや9.11などでも同じような現象が起こっているのです。不況に強い安全資産というのは、金やプラチナが代表的なものですが、日本円や日本国債なども安全資産として考えられているのです。
つまり、中国経済バブルで投資家が資本を日本国債に移すということは、国債の買い手が増えることを意味します。国債は買い手が増えれば、低金利(利回りが小さく)ても売れることになるため、金利は下がるのです。国債金利が下がれば、住宅ローン金利も下がります。
2016年の住宅ローン金利予測
中国経済バブルの崩壊 → 投資家の安全資産への資産移行 → 国債買い手増加 → 国債金利低下 → 住宅ローン金利低下
日銀の国債借り入れ
今の住宅ローンの低金利を引き起こしているのでは、日銀の国債買い入れにあると言っても過言ではありません。前述した通りで、日銀が大口の買い手となり、国債を買えば買うほど国債の金利は低金利になり、住宅ローン金利も低金利になるからです。日銀は国債金利を下げたいから国債金利の買入れをしているのではなく、日本で出回っているお金の総量を増やしてインフレを誘導したいから、国債の借入をしているのです。これがアベノミクスです。
しかし、民間銀行は資金の一部を安全な投資先である日本国債に回しているため、ある程度の国債は保有しているのですが、無尽蔵に国債があるわけでもありません。日銀としても、未来永劫国債の借入を続けていくわけにはいかないのです。2017年までで日銀の国債買い入れ枠は年間160兆円もあるのです。民間銀行全体の預金残高は652兆円で貸出残高は453兆円しかありません。
国債の買入れが止まれば、国債金利が上昇するだけでなく、無理やり円安になっていた為替相場も円高傾向に再び戻ってしまうため、円安で高まっていた日経平均株価も下がってしまうことが予測されるのです。
国債買い入れの停止が、国債金利の上昇、円高、日経平均株価の低下を引き起こしてしまうのです。このタイミングまでにインフラが成功し、景気が上向いていれば良いのですが、そうでなければ住宅ローン金利は上昇するけど、景気は悪いままということが起こり得るのです。
2016年の段階では、日銀の国債買い入れが続くことが予測されるので住宅ローン金利は低金利のまま継続することが予測されます。
2016年の住宅ローン金利予測
日銀の国債買い入れが続く → 国債買い手増加 → 国債金利低下 → 住宅ローン金利低下
インフレターゲットは成功するのか?
物価上昇、企業の利益上昇、従業員の給料の上昇、個人消費拡大という流れが上手くいけば、好景気の循環に入るため、政策金利も上昇させることができ、短期プライムレートも上昇するため、住宅ローン金利は上昇します。住宅ローン利用者にとっても、金利が上昇しても給料が上がっている状態なので、悪いことではありません。
しかし、今の日本の経済状況は、日銀の国債買い入れによる円安誘導によって、半ば強制的に日経平均が押上らえているのです。輸出企業は儲かっているものの、非製造業などの業界では景気向上の影響というのはそれほど感じていないというのが現実なのではないでしょうか。当然、さらに従業員の給料にも跳ね返っているとはいいがたいのです。
ここに8%の消費増税、10%の消費増税が重なってくれば、実質的な収入は減り、消費が冷え込んでしまうという懸念すら顕在化してしまっているのです。消費が増えなければ景気が好景気になることはない為、引き続き住宅ローン金利は低下したままになってしまうのです。
多少の景気上昇感はあるものの、個人消費が伸び悩んでいる現状では2016年も、引き続き景気は今のまま進むということが予測されるのです。
2016年の住宅ローン金利予測
景気が悪いまま → 短期プライムレートが低下 → 住宅ローン金利低下(変動金利)
2016年の住宅ローン金利動向予測
- 世界経済の悪化から、外国人投資家の資本が日本国債に流れて、国債金利が低下し、住宅ローンの金利も低下する
- 2016年も引き続き日銀の国債買い入れは続き、国債金利が低金利の状態が続く
- 円安による企業の収益増加のプラスの影響も、消費増税による個人消費の減退というマイナス影響を打ち消すまでには至らないため、景気は今のままで住宅ローン金利も現状の状態が続く
予測結論
2016年も住宅ローン金利は引き続き、現状の低金利状態が続く可能性が高い!
と考えられるのです。急激な金利上昇の可能性は低いと言えます。
2017年4月には消費税10%への増税が待ち構えているため、2016年の低金利でかつ消費税の低いうちに物件購入に踏み切るのも良いかと思います。2017年に入ってしまうと、増税前の駆け込み需要狙いで物件価格が上衝してしまう可能性が高い為、2016年が物件購入の狙い目の年と言えるでしょう。