住宅ローンの変動金利を選ぶ際に、当然変動金利には金利上昇リスクがあります。その金利上昇リスクを軽減する方法として「固定金利つもり貯金」という手法があります。
「固定金利つもり貯金」とは
変動金利を選ぶ人が変動金利の金利上昇に備えるために、固定金利で住宅ローンを組んだときと同じ返済額から、変動金利で実際に返済する返済額の差分を貯蓄していくことで、万が一のことがあっても返済に困らないという住宅ローンの返済方法のひとつです。
しかし、本当に貯金をして金利上昇したときのために貯金をしておくのが正しい方法なのでしょうか?貯金をするよりも繰り上げ返済で元本を減らしておいた方が良いのではないでしょうか?
この疑問を解消すべく検証してみます。
「固定金利つもり貯金」は有効なのか?繰り上げ返済と比較
試算条件:借入3000万円、金利1.0%、借入期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なし
金利が10年に1.0%ずつ上昇(10年目2%、20年目3%、30年目4%)
固定金利は1.8%と仮定
年数 | 変動金利の返済額(実際) | 固定金利の返済額(仮定) | 毎月の貯金額 | 貯金額累計 | 貯金を返済に回す | 実質返済額 |
---|---|---|---|---|---|---|
1年~10年 | 84,685 | 96,327 | 11,642 | 1,397,040 | – | – |
11年~20年 | 95,243 | 96,327 | 1,084 | 130,080 | – | – |
21年~30年 | 102,209 | 96,327 | – | – | -8484 | 93,725 |
31年~35年 | 104,757 | 96,327 | – | – | -8484 | 96,273 |
となります。仮に全期間固定金利1.8%で借りていたと仮定した場合
- 1年目~10年目までで1,397,040円の貯金
- 11年目~20年目までで130,080円の貯金
ができることになります。
これを残りの21年目~35年目の金利上昇時の返済に分割して回すことができれば
- 21年~30年の返済額は本来は102,209円ですが、貯金をのぞければ93,725円の負担で済むのです。
- 31年~35年の返済額は本来は104,757円ですが、貯金をのぞければ96,273円の負担で済むのです。
貯金ではなく、固定金利の返済額との差分を繰り上げ返済に回した場合
年数 | 変動金利の返済額 | 繰り上げ返済後の返済額 | 返済額軽減効果 |
---|---|---|---|
1年~10年 | 84,685 | 84,685 | 0 |
11年~20年 | 95,243 | 88,342 | -6,901 |
21年~30年 | 102,209 | 92,427 | -9,782 |
31年~35年 | 104,757 | 94,730 | -10,027 |
繰り上げ返済をすれば元本が減り、毎月の返済利息が減るため毎月の返済額も軽減できるのです。
21年~30年を見ると
- 貯金をしてそれを返済に回した場合の実際の返済負担額:93,725円
- 繰り上げ返済をした場合の実際の返済負担額:92,427円
となります。
「あれっ少しだけ繰り上げ返済の方が良い結果ということ?」
と思うのは早計です。
貯金の方は、あくまでも貯金をした額を回したことにより、実質的に返済負担をしている額であって、銀行に返済している額は102,209円のままなのです。
繰り上げ返済をした方は、利息自体が本当に減っているのです。
- 繰り上げ返済なし 利息合計 10,141,855円
- 繰り上げ返済あり 利息合計 9,450,704円
691,151円の繰り上げ返済による利息削減効果あり。
ということなのです。
つまり
「固定金利つもり貯金」をするよりも、「固定金利との差分を繰り上げ返済に回した方」が
- 金利上昇後の毎月の返済額も抑えられる
- 数十万~数百万規模で繰り上げ返済の軽減効果が得られる
ということなのです。
貯金をしている暇があれば、どんどん元本を減らしていった方が、金利上昇後の返済額の軽減にもつながるということなのです。
まとめ
住宅ローンの変動金利の金利上昇リスクへの対策としては
「固定金利つもり貯金」ではなく、「固定金利との差分を繰り上げ返済」の方が理に適っているということなのです。
固定金利で返済したつもりになって、差分を繰り上げ返済してみるというのが有効な金利上昇対策と言えるのです。