住宅ローン金利推移・今後の金利予想・業界レポート／2016年8月

現状

住宅ローン金利の決定要因となる10年もの国債金利（長期金利）は2016年6月30日時点で終値： -0.230％でしたが、2016年7月27日時点で終値： -0.290％とマイナス金利はさらに進みました。結果として変動金利、当初10年固定金利、フラット35とすべての金利が低下しています。平均値でも当初10年固定金利は- 0.063％引き下げられた結果となっています。メガバンクを中心に当初10年固定金利の引き下げが目立った月と言えます。

また、すでに過去最低水準であったフラット35金利も0.900％と前月よりもさらに金利が低下し、史上最低金利を更新しています。

今後の金利予想

2016年7月27日時点で終値： -0.290％だった長期金利が2016年8月3日時点で終値： -0.095％と急上昇しています。この金利の急上昇は7月29日の日銀の金融政策決定会合で、黒田総裁が「緩和策を総括する」と発表したことが理由となっています。

「総括をする＝見直しをする」ということは、国債買入れの量的緩和を制限する可能性も出てくると予測した投資家が増えたということです。日銀が買ってくれる保証があるからこそ、投資家は国債を買っていたのですが、それがなくなるのであれば「国債価格が低下」する可能性が高くなり、国債を買い控える、国債を手放すという動きが加速したのです。買い手が少なくなれば、金利を上げなければ取引は成立しないので、金利が上昇するのです。

これを受けて、岩田規久男副総裁が8月4日「（検証の結果）金融緩和の程度を縮小することはありえない」と公表するなど、日銀にも焦りが見られるようです。

国債金利の上昇は9月の住宅ローン金利に反映されます。このままの長期金利の状況の場合、9月の住宅ローン金利は上昇する公算が高いの

現状

マンション価格が微増。戸建て価格が微減です。

今後の物件価格予想

ローン金利が低下すればそれだけ不動産投資をしやすい環境になり、需要が伸びる分、不動産業者も強気の価格設定が可能になるということです。金利が下がると同時に物件価格は上がるということを理解しておく必要があります。不動産投資のほとんどはマンションに対する投資ですので、マンション価格の上昇が顕著であり、実需（実際に住む方の需要）の影響が大きい戸建は昨年同月対比でもほとんど変化はなく、価格は安定しています。

住宅購入のタイミング：すごく良い

日銀のマイナス金利導入の影響で国債金利もマイナス金利になり、住宅ローン金利も全体的に低下しているため、住宅ローンの購入タイミングとしてはこれ以上ないタイミングと言っていいでしょう。銀行は日銀のマイナス金利導入で日銀に預金していた分を他の融資先に振り分ける必要があり、その振り分け先の一つが住宅ローンになっているのです。また、新規の借入需要よりも、借り換え需要が鮮明になり、各銀行ともに今まで以上に顧客獲得競争が激化しています。住宅ローン利用者にとっては「審査に通りやすい」「金利が低金利」「付加サービスが充実する」商品が増えることになります。

また、全期間固定金利のフラット35金利の低下も顕著になっています。35年間の全期間固定金利で0.90％で借りられるというのは、メガバンクが提供している当初10年固定金利と大きな差がありません。ここまで金利が押し下げられれば、そのうち上昇するのは間違えありませんので、今のタイミングでフラット35を選ぶというのは賢い選択と言えます。

とくに日銀の金融政策決定会合で、黒田総裁が「緩和策を総括する」と発表したことによる長期金利の急上昇は2016年9月の金利に影響してくるので、8月、9月での住宅ローン利用を検討している方は8月中に金利が適用される住宅ローンを選択することをおすすめします。

住宅ローン選びの注意点

マイナス金利の導入で1年、2年の短期的なスパンで見れば金利が上昇するというリスクは少ないはずです。日銀や政府の目論見通り物価上昇・賃金上昇とはいかない可能性が高いのです。これはアベノミクスから3年経過した今を見てもあきらかなことです。ただし、5年、10年というスパンで見た場合には、日本株の上昇、円安誘導などで企業の景気が良くなり、物価上昇、インフレ、賃金上昇になる可能性があります。インフレ・好景気になれば給料も上がりますが金利も上がるため、変動金利を選ぶ場合でも金利上昇時の対策は十分に考えておく必要があります。

金利上昇のタイミングを正確に当てるのは至難の業なので、変動金利を選ぶ場合には「上昇したときにどうするか？」の事前準備をあらかじめしておくことが重要なのです。一番有効な方法は、低金利の変動金利を選んで、繰り上げ返済でできるだけ早い段階（金利上昇する前に）で元本を減らしておくことです。

同時にフラット35などの全期間固定金利も、数年前の変動金利並に低金利になっているため、フラット35Sも含めて、金利上昇リスクがない魅力的な住宅ローンとなっています。変動金利と同時に検討すべき住宅ローンと言えます。

今後はさらに住宅ローン競争が激化し「毎月一番金利が低い銀行が変わる」「金利以外の独自サービスを提供する住宅ローンが増える」ことが予想されます。一番おすすめの住宅ローンが毎月変わっていくのです。住宅購入、借り換えの検討中は申込んだ後でも、別の銀行にも申込む方がメリットが大きいというシチュレーションも考えうるので、情報の収集には時間を使いましょう。