住宅ローン金利推移・今後の金利予想・業界レポート／2016年9月

現状

住宅ローン金利の決定要因となる10年もの国債金利（長期金利）は2016年8月3日時点で終値： -0.950％でしたが、2016年9月3日時点で終値： -0.300％と以前としてマイナス金利ではあるものの、金利は5か月ぶりの高値を記録しています。国債金利の上昇を受けて、当初10年固定金利、フラット35など変動金利を除く、ほとんどの金利プランで金利が上昇している状況です。

今後の金利予想

2016年8月から9月にかけての金利の急上昇は7月29日の日銀の金融政策決定会合で、黒田総裁が「緩和策を総括する」と発表したことが大きな要因となっています。

「総括をする＝見直しをする」ということは、国債買入れの量的緩和を制限する可能性も出てくると予測した投資家が増えたということです。日銀が買ってくれる保証があるからこそ、投資家は国債を買っていたのですが、それがなくなるのであれば「国債価格が低下」する可能性が高くなり、国債を買い控える、国債を手放すという動きが加速したのです。買い手が少なくなれば、金利を上げなければ取引は成立しないので、金利が上昇するのです。

また、8月の終わりにはFRBのイエメン議長が9月の米利上げに言及しました。米国は雇用統計や経済指標が好調であるため、9月に再び金利を引き上げる可能性があることを示唆したのです。当然、ドル高に振れて、円安株高という状況になっています。円安株高になれば投資家は国債から株への投資に資産を移すので、これも国債の売りにつながり、国債金利の上昇に拍車をかけているのです。

9月の米利上げによって、さらに国債金利の上昇が起こる可能性があるということを理解しておきましょう。ただし、マイナス金利は引き続き実行されているため、日本の住宅ローン金利が過去例にない最低金利すいじゅんであることは変わりません。

現状

マンション価格が微減。戸建て価格が上昇し、前年同月対比では4.0％前後の同じ水準となっています。

今後の物件価格予想

ローン金利が低下すればそれだけ不動産投資をしやすい環境になり、需要が伸びる分、不動産業者も強気の価格設定が可能になるということです。金利が下がると同時に物件価格は上がるということを理解しておく必要があります。とくにローン金利の低下と相続税対策の不動産投資が活発化しているため、物件価格は引き続き上昇していくことが予想されます。

住宅購入のタイミング：すごく良い

日銀のマイナス金利導入の影響で国債金利もマイナス金利になり、住宅ローン金利も全体的に低下しているため、住宅ローンの購入タイミングとしてはこれ以上ないタイミングと言っていいでしょう。銀行は日銀のマイナス金利導入で日銀に預金していた分を他の融資先に振り分ける必要があり、その振り分け先の一つが住宅ローンになっているのです。また、新規の借入需要よりも、借り換え需要が鮮明になり、各銀行ともに今まで以上に顧客獲得競争が激化しています。住宅ローン利用者にとっては「審査に通りやすい」「金利が低金利」「付加サービスが充実する」商品が増えることになります。

一時的に今月のような金利が上昇する局面もありますが、マイナス金利が続いているのであれば金利が大幅に上昇することは考えにくく、当面は低金利水準が続くと予測されます。

直近の金利予想としては、9月に「日銀の金融政策決定会合での緩和策の総括」「米国の利上げ実施」という2つの大きなトピックがあり、この結果によって国債金利、住宅ローン金利もかなり大きく動くと考えられるので、注視しておきましょう。

住宅ローン選びの注意点

マイナス金利の導入で1年、2年の短期的なスパンで見れば金利が上昇するというリスクは少ないはずです。日銀や政府の目論見通り物価上昇・賃金上昇とはいかない可能性が高いのです。これはアベノミクスから3年経過した今を見てもあきらかなことです。ただし、5年、10年というスパンで見た場合には、日本株の上昇、円安誘導などで企業の景気が良くなり、物価上昇、インフレ、賃金上昇になる可能性があります。インフレ・好景気になれば給料も上がりますが金利も上がるため、変動金利を選ぶ場合でも金利上昇時の対策は十分に考えておく必要があります。

金利上昇のタイミングを正確に当てるのは至難の業なので、変動金利を選ぶ場合には「上昇したときにどうするか？」の事前準備をあらかじめしておくことが重要なのです。一番有効な方法は、低金利の変動金利を選んで、繰り上げ返済でできるだけ早い段階（金利上昇する前に）で元本を減らしておくことです。

同時にフラット35などの全期間固定金利も、数年前の変動金利並に低金利になっているため、フラット35Sも含めて、金利上昇リスクがない魅力的な住宅ローンとなっています。変動金利と同時に検討すべき住宅ローンと言えます。

今後はさらに住宅ローン競争が激化し「毎月一番金利が低い銀行が変わる」「金利以外の独自サービスを提供する住宅ローンが増える」ことが予想されます。一番おすすめの住宅ローンが毎月変わっていくのです。住宅購入、借り換えの検討中は申込んだ後でも、別の銀行にも申込む方がメリットが大きいというシチュレーションも考えうるので、情報の収集には時間を使いましょう。