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住宅購入予算というのは、どうやって決めるものなのでしょうか?住宅ローン選びをする前にまずは適正な住宅購入予算を決める必要があります。
適正な住宅購入予算でなければ
- 「決めた予算の住宅ローンが組めない」
- 「住宅ローンは組めたけど、返済に四苦八苦している」
なんて状況に陥り兼ねないのです。
「年収の6倍を設定しておけば良い」というのは本当?
不動産会社などに相談すると
「ご年収の6倍までは住宅ローンの審査が通ると思いますので、そのぐらいの予算が適正です。」
というような話を聞くことがあるかと思います。
これは半分本当ですが半分は間違っています。
何が本当かと言うと・・・
銀行が住宅ローン審査をするときには、「返済負担率」という指標を重視するのです。
返済負担率とは
年収に対する年間の住宅ローン返済額の割合のことです。
平成25年度の金融機関に対するアンケートデータでは
- 50%以内(1件):1.2%
- 45%以内(5件):6.0%
- 40%以内(20件):23.8%
- 35%以内(24件):28.6%
- 30%以内(15件):17.9%
- 20%以内(11件):13.1%
- その他(8件):9.5%
というデータが出ています。
これを見ると、年収に対しての35%が年間の住宅ローン返済額であれば審査でこの項目はOKになる可能性が高いと考えられるのです。
年収に対して住宅ローンの返済額が35%という指標から逆算していくと「だいたい年収の6倍程度の借り入れ」ということになるのです。
何が違うのかというと・・・
銀行は「年収に対する倍率(年収倍率)」で審査しているのではなく、「返済負担率」で審査しているのです。
「返済負担率」は年収に対する年間の住宅ローン返済額の割合です。
年間の住宅ローン返済額と言うのは、住宅ローンの金利タイプを「金利が低金利の変動金利にするのか?」「金利が高い固定金利にするのか?」の選択や住宅ローン選びによって変わってくるものなのです。
住宅ローンをどの銀行にするのか?金利タイプをどの金利タイプにするのか?によって年間の住宅ローン返済額は数十万単位で変わってしまうため、審査の基準となる「返済負担率」も大きく変動してしまうのです。
つまり、年収倍率で概ねの予算を決めるということは間違ってはいませんが、住宅ローン選びによっても、借りられる住宅ローンの金額というのは大きく変動してしまうため正確に予算を決められるわけではないということなのです。
また、購入する物件(新築・建売・マンション・戸建て・中古物件)によって、基軸になる年収倍率は違うということです。
住宅ローン審査では「物件の資産価値(担保価値)」というのも重視されます。
中古住宅を買うのと、新築住宅を買うのでは、同じ年収の方であっても、銀行が住宅ローンで融資する金額は変わってきてしまうのです。
つまり、中古住宅でも、新築住宅でも、同じ年収倍率「6倍」で決めるというのは少々乱暴な方法と言っていいでしょう。
おすすめの住宅ローン予算の決定方法
1.過去の平均値を参考にする
住宅金融支援機構というフラット35を提供している公的な機関が調査した10万件を超える調査データなので、信頼性の高い情報と言えます。この平均値を参考にするのが一番実態に近い予算になると考えて良いでしょう。しかも、購入したい住宅の種類別になっているため、概算の精度が高まると考えられます。
項目 | 年齢(歳) | 年収倍率(倍) | 借入金(万円) | 毎月返済額(千円) | 返済負担率 |
---|---|---|---|---|---|
マンション | 39.4歳 | 5.9倍 | 2746万円 | 120600円 | 21.3% |
建売 | 37.2歳 | 6.1倍 | 2432万円 | 108800円 | 23.6% |
注文住宅 | 39.7歳 | 5.2倍 | 2222万円 | 99600円 | 21.0% |
土地注文住宅 | 36.1歳 | 6.2倍 | 3015万円 | 119000円 | 24.4% |
中古マンション | 40.9歳 | 4.5倍 | 2002万円 | 91700円 | 19.2% |
中古戸建 | 40.7歳 | 4.5倍 | 1867万円 | 85900円 | 20.0% |
- 新築マンション:5.9倍
- 建売住宅:6.1倍
- 注文住宅:5.2倍
- 土地付き注文住宅:6.2倍
- 中古マンション:4.5倍
- 中古戸建:4.5倍
2.返済負担の強度に応じて自分なりに上記の年収倍率を調整する
上記の年収倍率を参考にした場合、返済は全国平均と同じなので無理なく返済できるラインと言えるでしょう。
しかし、たとえば海外旅行などの浪費を抑えて住宅ローン返済の返済額が大きくても良い家庭もあれば、子だくさんなので年収に対しての住宅ローン返済額が大きくなると困るという家庭もあるのです。
上記に参考指標対して
- 返済負担が大きくても構わない:+1.0倍
- 多少は返済負担が大きくても買わない:-0.5倍
- 無理なく返済していきたい:そのまま
- より確実に返済していきたい:-0.5倍
をすると良いでしょう。
ケースA
自己資金300万円と年収500万円で新築マンションを検討している方が「子供がいないのである程度返済額が大きくても構わないけど、多少良いマンションに住みたい」と考えるのであれば
1.適用する年収倍率を計算:新築マンションの平均の年収倍率:5.9倍 + 0.1倍 = 6.9倍
2.借り入れ可能金額を計算:年収500万円 × 6.9倍 = 3450万円
3.自己資金をプラス:3450万円 + 300万円 = 3750万円
4.諸費用をマイナス:3750万円 - 150万円 = 3600万円
となります。
この方の新築マンション購入予算は3600万円ということになります。
ケースB
自己資金0円と年収350万円で中古の戸建て購入を検討している方が「子供も3人いるので無理なく返済できる方が良い」と考えるのであれば
1.適用する年収倍率を計算:中古戸建の平均の年収倍率:4.5倍 + 0.倍 = 4.5倍
2.借り入れ可能金額を計算:年収350万円 × 4.5倍 = 1575万円
3.自己資金をプラス:1575万円 + 0円 = 1575万円
4.諸費用をマイナス:1575万円 - 150万円 = 1425万円
となります。
この方の中古戸建て購入予算は1425万円ということになります。
中古戸建の場合は、物件の資産価値(担保価値)が低い為、借りられる金額も少なくなってしまうのです。しかし、年収が350万円と低めで自己資金が0円で、さらに無理なく返済したいという希望条件の場合は、1500万円前後の予算になってしまうのは致し方ないという試算になります。
それでも、中古の戸建てで1500万円あれば、築15年ぐらいで首都圏の通勤圏でも十分に広めの戸建てを探することができるでしょう。
3.自己資金をプラスする
上記の試算例でお気づきかと思いますが、住宅購入予算には自己資金(頭金)をプラスして考えます。
これは自分の貯金でも構いませんし、親からの援助資金でも、構いません。あくまでも住宅購入時に使えるお金です。
4.諸費用をマイナスする
住宅ローンを組む際には諸費用という費用が発生します。
ネット銀行の住宅ローンを例にとると・・・
- 事務手数料:借入額の2.0%(税別)
- 抵当権設定費用+司法書士報酬:10万円~15万円
- 印紙代+登記費用:8万円~10万円
ほどの諸費用が必要になってきます。
3000万円の借入であれば、80万円ほどの諸費用負担になります。
また、それ以外にも
- 新居への引越し費用:10万円~15万円
- 新居に合わせた家具などを新調費用:家庭ごとに違う
なども発生します。
住宅ローンを借りるということは目に見える費用だけでない余分な費用も出てきてしまうのです。
150万円ぐらいの諸費用を念頭に住宅購入予算からマイナスしておくことをおすすめします。
まとめ
住宅購入予算の計算手順
1.購入する物件のタイプごとに過去の年収倍率の平均値を確認する
2.返済の負担度合いで年収倍率を調整する
3.自己資金と諸費用を含めて住宅購入予算を決定する
住宅購入予算の計算式
年収 × 年収倍率 + 自己資金 - 諸費用 = 住宅購入予算
です。
住宅選びの段階では、それほど正確に住宅購入予算を決める必要がないというのも一理ありますが、大体の購入予定の物件の種別や自己資金や諸費用ぐらいは想定して、試算しておいた方が、物件選びをしてからローンが下りないというような状況に陥らないで済むことになります。
また、住宅購入予算をきちんと計算してみると
- 住宅ローン審査で何が重視されるのか?
- 将来の返済ふたんがどうなるのか?
など住宅ローンに対する理解も深まるのです。