doctor2128_128「住宅ローン返済で頭金を増やすよりも、頭金分は繰り上げ返済のためにとっておいた方がお得になると聞いたのですが、これは本当なのでしょうか?」

という質問をいただきました。これが本当なのかどうか?早速、検証してみます。

頭金が多ければ多いほど元本が減り、利息が減るのはまちがえない

頭金を増やすことができればローンでの借入額が減るのは間違えありません。
借入額が減れば利息も減るので、総返済額が安くなるのも間違えありません。

住宅ローンというのは複利計算で利息が積み上がっていくものなので、元本が早く減る方が総返済額が有利になるものなのです。

では、なぜ「住宅ローン返済で頭金は繰り上げ返済にした方がお得」というような話が出てくるのでしょうか?

まずは試算してみましょう。

試算条件

  • 物件価格:3500万円
  • 貯金:500万円

※今回は諸費用は無視する。

ケース1

貯金500万円をすべて頭金にして、3000万円の借入で住宅ローンを組む

ケース2

貯金500万円のうち100万円だけを頭金にして、3400万円の住宅ローンを組む。残った貯金の400万を毎月2万円ずつ期間短縮型の繰り上げ返済に回す

ケース3

貯金500万円で頭金は払わずに、3500万円の住宅ローンを組む。残った貯金の500万を毎月2万円ずつ期間短縮型の繰り上げ返済に回す

試算結果

プランケース1ケース2ケース3
物件価格3500万円3500万円3500万円
ケース500万円を頭金にする100万円を頭金にして400万円を月2万円ずつ期間短縮型の繰り上げ返済頭金をなしにして500万円を月2万円ずつ期間短縮型の繰り上げ返済
借入額3000万円3400万円3500万円
返済期間35年30年7ヶ月29年9ヶ月
借入額30,000,00034,000,00035,000,000
繰り上げ返済がないときの毎月の返済額84,68695,97798,800
利息5,567,7955,207,7865,268,406
支払合計35,567,79539,207,78640,268,406
頭金5,000,0001,000,0000
頭金込支払合計40,567,79540,207,78640,268,406

結果 : 一番頭金込の総返済額が安くなるのはケース2

「あれっ、本当に頭金よりも繰り上げ返済に貯金を使った方が総返済額が安くなっているけど・・・なんで?」

と多くの方が不思議に感じるかもしれません。この理由を解説します。

解説

今回の試算で、貯金の100万円だけを頭金にして、残りの400万円を期間短縮型の繰り上げ返済に回したプランが一番総返済額が安くなりました。

これは前述したとおりの

元本を減らすことで利息が減る効果

よりも

期間短縮によって利息が減る効果

が上回ったから起きたことなのです。

これが返済軽減型の繰り上げ返済の場合にはこうはなりません。

返済期間が短くなった分、毎月の返済額は増えますが利息が減ります。その効果が頭金によって元本を減らす効果よりも大きくなるときに総返済額が安くなるのです。

ケース3よりも、ケース2の方が総返済額が安いのにも、理由があり、ケース2の場合は200ヶ月なので16年8か月繰り上げ返済を続けることになります。が、ケース3の場合は250か月なので20年10カ月繰り上げ返済を続けることになります。期間短縮型の場合は毎月の返済額が繰り上げ返済関係ない時でも、上がるため、繰り上げ返済終了後から完済までの期間が長くなるケース2の方が返済総額が安くなったのです。

頭金を減らして期間短縮型の繰り上げ返済に回す返済方法のメリットデメリット

メリット

  • 頭金を含めた総返済額が安くなる可能性がある
  • 手元にお金を残せるため、いざという時の支出増・収入減に対応できる

デメリット

  • 毎月の返済額は期間短縮型の繰り上げ返済をした分、何もしないケース1よりも増えてしまう

この返済方法はどんな方が選ぶべき?

  • 住宅ローン借入当初の急激な支出増や収入減のリスクが大きい方
  • 貯金をめいいっぱい頭金に投入しようとしている方

住宅ローン借り入れ当初に子供が生まれた場合に、教育費、子育て費用などの支出が増えることになります。同時に、奥さんは子育てで働くことができなくなり収入減というケースもあります。この中で貯金をほぼゼロにしてまで頭金に回すのであれば、手元に残しながら期間短縮型の繰り上げ返済に回して、返済をしていくという方法は賢い返済方法と言えます。

まとめ

「住宅ローン返済で頭金を増やすよりも、頭金分は繰り上げ返済のためにとっておいた方がお得になると聞いたのですが、これは本当なのでしょうか?」

の答えは本当です。

ただし、その代わりに毎月の返済額が増えるなどのデメリットもあるので、メリットデメリットを比較したうえで、自分たちの返済計画に応じて検討する必要があります。