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住宅ローンの返済方法には大きく分けて2つの種類があります。「元利均等返済」と「元金均等返済」です。

多くの銀行が「元利均等返済」をすすめてくるのですが、それは本当に正しいのでしょうか?ここで住宅ローンの返済方法はどちらを選んだ方が利用者にとってお得になるのか?徹底検証します。

「元利均等返済」と「元金均等返済」の違いを把握する

そもそも、「元利均等返済」と「元金均等返済」は何が違うのでしょうか?

「元利均等返済」とは

「元利均等返済」という名前の通りで、元金(借入がをした金額)と利息(借入した金額に対して発生する利息)を均等に返済するという意味の返済方法になります。

簡単に言えば

「元金の返済額」+「利息の返済額」=「毎月の返済額合計」(一定)

という計算方法になり、「毎月の返済額合計」が常に一定になる返済方法のことを意味します。

金利が一定であれば、1か月目に返済する金額も、10年後に返済する金額も、全く同じという返済方法のことを意味するのです。

返済がはじまった当初は、借入残高が大きい為、利息の返済分の割合が大きく、元本の返済分の割合が小さくなります。

「元利均等返済」のメリットデメリット

  • メリット:毎月の返済額が一定であるため返済計画が立てやすい
  • デメリット:はじめの方は元金の返済額の割合が少なくなるため、総返済額が高くなる

「元金均等返済」とは

「元金均等返済」という名前の通りで、元金(借入がをした金額)を均等に返済する返済方法になります。

簡単に言えば

「元金の返済額」(一定)+「利息の返済額」=「毎月の返済額合計」

という計算方法になります。借入額を返済期間で割った「元金の返済額」が一定になり、それに利息分を上乗せして、毎月の返済額が決まるのです。利息は借入残高によって異なるため、毎月返済額と言うのは変動することになります。

返済がはじまった当初でも、元金の返済額はある程度あるため、利息分をこれに上乗せすると「毎月の返済額合計」が「元利均等返済」よりも高額になる特徴があります。

「元利均等返済」のメリットデメリット

  • メリット:はじめの方も元金の返済額の割合は一定額あるので、総返済額が安くなる
  • デメリット:はじめの方も元金の返済額が一定額あるので、毎月の返済額が高くなる

「元利均等返済」と「元金均等返済」の返済額負担を試算して比較

前述したメリットデメリットというのは一般論であり、実際にどのくらいの「毎月の返済額」「総返済額」に差が出てくるのかはわかりません。そこで今回は実際に試算して比較してみました。

検証「元利均等返済」と「元金均等返済」の返済額負担比較

条件1:借入額3000万円、借入期間35年、金利1.5%(金利変動:なし)

項目 元金均等返済 元利均等返済 差分
借入額 3000万円 3000万円
金利 1.5% 1.5%
初回返済額(合計) 108,928 91,855 17,073
初回返済額(元金) 71,428 54,355 17,073
初回返済額(利息) 37,500 37,500 0
10年目返済額(合計) 98,213 91,855 6,358
10年目返済額(元金) 71,428 63,146 8,282
10年目返済額(利息) 26,785 28,709 -1,924
20年目返済額(合計) 87,500 91,855 -4,355
20年目返済額(元金) 71,428 73,359 -1,931
20年目返済額(利息) 16,071 18,496 -2,425
30年目返済額(合計) 76,786 91,855 -15,069
30年目返済額(元金) 71,428 85,222 -13,794
30年目返済額(利息) 5,357 6,633 -1,276
利息合計 7,893,570 8,579,013 -685,443
総返済額 37,893,570 38,579,013 -685,443

結果

  • 初回返済額(合計):「元金均等返済」の方が17,073円高い
  • 20年目返済額(合計):「元金均等返済」の方が1,924円安い
  • 総返済額:「元金均等返済」の方が685,443円安い

条件2:借入額3000万円、借入期間35年、金利1.5%(金利変動:10年後1.0%上昇)

項目 元金均等返済 元利均等返済 差分
借入額 3000万円 3000万円
金利 1.50% 1.50%
金利変動 10年後に1.0% 10年後に1.0%
初回返済額(合計) 108,928 91,855 17,073
初回返済額(元金) 71,428 54,355 17,073
初回返済額(利息) 37,500 37,500 0
10年目返済額(合計) 116,071 103,035 13,036
10年目返済額(元金) 71,428 55,187 16,241
10年目返済額(利息) 44,643 47,848 -3,205
20年目返済額(合計) 98,214 103,035 -4,821
20年目返済額(元金) 71,429 70,844 585
20年目返済額(利息) 26,785 32,192 -5,407
30年目返済額(合計) 80,357 103,035 -22,678
30年目返済額(元金) 71,429 90,940 -19,511
30年目返済額(利息) 8,928 12,095 -3,167
利息合計 10,581,086 11,933,237 -1,352,151
総返済額 40,581,086 41,933,237 -1,352,151

結果

  • 初回返済額(合計):「元金均等返済」の方が17,073円高い
  • 20年目返済額(合計):「元金均等返済」の方が4,821円安い
  • 総返済額:「元金均等返済」の方が1,352,151円安い

考察

「元金均等返済」の方が68万円以上も総返済額安くなる!

試算結果としては「元金均等返済」の方が同じ条件で借り入れたとしても、68万円以上も総返済額安くなる結果になりました。しかも、金利が10年後に1.0%上昇したとした場合には135万円も総返済額やすくなるのです。

住宅ローンの利息は複利計算で計算されるため、できるだけ早く元金を減らした方が利息が少なくなるからです。「元金均等返済」は借入当初も、一定程度の元金返済を行うため、「元利均等返済」と比較して元金の返済が進むスピードが速いのです。

そのため、同じ条件でも総返済額は安くなりますし、金利が上昇する場合にはより総返済額を安くすることができるのです。

騙されてはいけない!銀行は「元利均等返済」ばかりをすすめてくる!

前述の通りで、「元利均等返済」は利息の支払総額が大きくなってしまうのです。住宅ローンの利用者にとっては大きな損ですが、これは銀行にとっては自分の会社の儲けが増えることにつながります。

そのため、銀行は「元利均等返済」ばかりをすすめてくるのです。

「返済計画が立てやすい」メリットよりも、金利上昇リスクを低減できるメリットの方が大きい!

銀行が「元利均等返済」をすすめてくるのは利息収入が増えるからですが、大抵は「毎月の返済額が一定の方が返済計画が立てやすいので・・・」と言ってきます。

しかし、毎月の返済額が一定だから返済計画が立てやすいというのはたいしたメリットではないのです。「元金均等返済」でも最終返済月までの返済額は計算できますし、金利が上昇すれば「元利均等返済」でも返済額は変動してしまうからです。

それ以上に、低金利時代に現在では、今後の金利上昇が予測されます。金利上昇時にも、総返済額を抑えるリスクヘッジというのが住宅ローン選びの中で非常に重要なウェイトを占めているのです。

まとめ

編集者の意見では

住宅ローンの返済方法は金利上昇リスクを抑えられる「元金均等返済」をおすすめします。

「元金均等返済」の場合は、当初の毎月の返済額が大きくなる一方、最終的な総返済額は数十万円も安くなるのです。

銀行の担当者の言い分を真に受けて本質を見間違えてはいけないのです。