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住宅ローンの借り換えで比較するときには何を重視すれば良いのでしょうか?今回は「住宅ローン借り換え比較で絶対に抑えておくべき注意点と住宅ローン借り換え比較の手順」について解説します。
住宅ローン借り換えは新規借入時と比較すべきポイントが違う!!
まず多くの方が疑問に思うのは
「借り換えで住宅ローンを比較するときって、新規借り入れで住宅ローンを比較するときと同じじゃないの?自分で住宅ローンを決めたから同じじゃだめなの?」
という点かと思います。
しかし、ここには大きな違いがあるのです。
では「新規借り入れ」と「借り換え」で何が変わってくるのでしょうか?
「新規借り入れ」時と「借り換え」時の違い
- 本人や家族の年齢が違う
- 収入や役職が違う
- 借入残高と担保価値の関係が違う
- 家族構成が違う
- 住宅ローンの返済実績ができている
- 自身の考え方が違う
・・・
という様々な環境の変化が起こっているのが普通なのです。
だとすれば、新規借り入れ時と借り換え時で住宅ローンの比較のポイントが変わっているのも、当然と言っていいでしょう。
その注意点について解説していきます。
住宅ローン借り換え比較で絶対に抑えておくべき注意点
注意点その1.金利タイプの変更に注意せよ!
借り換えの場合
- 変動金利 → 変動金利
- 全期間固定金利 → 全期間固定金利
であれば、今まで通りの金利タイプですので
- 変動金利は低金利な分、金利上昇リスクがある
- 全期間固定金利は金利上昇リスクがない分、ベースの金利が高い
という金利タイプの特徴は、今まで通りです。
当初固定金利であれば、2年、3年、5年、7年、10年、15年と期間に違いがあるもの、はじめの期間は固定金利でその後の期間は変動金利や固定金利が選べる、また金利も上昇するという特徴も変わりません。
しかし、
- 全期間固定金利 → 変動金利
- 変動金利 → 全期間固定金利
など、金利タイプを変更する場合には、今までの金利タイプのメリットデメリットが大きく変わってくるので注意が必要なのです。
ベースの金利が高い全期間固定金利から、ベースの金利が低い変動金利に借り替えるのであれば、金利は大きく低下するので借り換えメリットも高額になることが想定されます。しかし、これは同時に金利上昇リスクが発生していることになります。
金利が今のまま低金利であれば「全期間固定金利 → 変動金利」を選んでも、計算通りの高額な借り換えメリットが享受できますが、金利が上昇してしまえば「全期間固定金利 → 変動金利」を選んだ場合は変動金利の方が高い金利になってしまい、「借り換えたら総返済額が増えてしまった。」ということになりかねないのです。
これは「変動金利 → 全期間固定金利」も同じです、ベースの金利が低い変動金利から、ベースの金利が高い全期間固定金利に借り換えた場合には、借り換えメリットは少額、もしくはマイナスになってしまう代わりに金利上昇リスクが回避できることになります。しかし、金利が今のまま低金利であれば「借り換えしなかった方がお得だった。」となってしまうのです。
要するに金利タイプを変える場合には金利の状況によっては「借り換えしなければ良かった。」となってしまう可能性があるということなのです。
注意点の回避法
- なるべく同じ金利タイプで借り換えを検討する
- 金利タイプを変更する場合は借り換えで損をする可能性も考慮した上で実行する
- 今後の金利推移の予想は外れても後悔しない
「金利タイプを借り換えで変更する」ということは、自分なりの金利予想があって、「金利が上がりそうだから全期間固定金利にする」「金利が低金利のままだと思うから、変動金利にする」という意思決定があるはずです。金利の予想はグローバルな経済環境によって決まるため、経済の専門家であっても正確に予想することはほとんどできないものなのです。だとすれば、予想が外れる可能性も十分にあると納得しておく必要があります。
注意点その2.一括前払い型の保証料は戻ってこない!
- メガバンクや地方銀行 → 保証料が金利+0.2%、事務手数料3万円(税別)
- ネット銀行 → 保証料が無料、事務手数料借入額の2.0%(税別)
という特徴の違いがあります。
メガバンクや地方銀行の場合は、保証料が発生するのですが
- 金利上乗せ型(金利+0.2%)
- 一括前払い型(100万円~150万円程度)
の2つのプランがあるのです。
ここで注意すべきは「一括前払い型」で保証料を支払っていて、借り換えを検討している方です。
一般的に「一括前払い型」の住宅ローンを借りている場合
35年ローンで10年目に借り換えを検討したのであれば
「10年/35年だから一括前払いした3分の2は返ってくるだろう。これを借り換えの諸費用にすればいいや。」
と思ってしまうのが普通ですが、残念ながら返還額はほぼ0円です。
保証料の返還額は、銀行独自の計算ロジックで計算されてしまいます。
相場は
- 5年で50%
- 10年で0%
で、35年ローンであっても、10年経過時には前払いの保証料は使い切ってしまうことになるのです。
「なぜ?」
銀行は保証料を返還したくないのでそのような計算ロジックを採用していると勘ぐってしまいますが、契約書にある以上、銀行に従うほかありません。
この場合は、保証料が戻ってこないことを前提に借り換えメリットを計算しなければならないのです。保証料の返還を借り換え諸費用の資金とすることはできないのです。
注意点の回避法
- 一括前払い型で借入中の方は、保証料の返還がない前提で住宅ローンの借り換えメリットを計算する必要がある
注意点その3.新規借り入れ時よりも年齢が高くなっていることに注意!
新規借り入れから、5年、10年、15年と経過したときに借換をすることになります。
30歳で借りた方も、35歳、40歳、45歳・・・と新規借り入れ時よりは年を取っているはずです。
年を取ると何が変わるかと言うと・・・「病気リスク」と「老後への備え」です。
「病気リスク」
年を取れば、病気になるリスクも当然増えます。
新規借り入れ時は「生命保険も入っているから、フラット35で団信つけなくてもいいでしょ。」という軽いノリで決めていた方も、
10年経過すれば「身体の不調になることも増えているし、やはり万が一のために団信には入った方がいいかもな。」と心変わりしている可能性もあるのです。
借り換えでは「通常の団信」「疾病保障団信」「がん保障団信」「介護保障団信」など病気リスクを回避してくれる住宅ローンを重視して比較するということも一つの解決策なのです。
また、病気になったときに返済を一時的に利息のみにできる「コントロール返済」がある住宅ローンもおすすめです。
「老後への備え」
年を取れば、自身の収入や老後に必要なお金も見えてきます。
「今までは35年返済でも、十分と思っていたものが、出世もして収入も増えたので返済額を上げて完済までの期間を短くしたい」という判断もありますし
「逆に生命保険や個人年金、貯金など老後の備えはできてきている分、毎月の返済額が苦しいので返済期間を長くしたい」という判断もあるのです。
借り換えのタイミングでは、返済期間や返済額等を見直せるタイミングですので「老後への備え」を今一度、家族で相談する必要があります。
注意点の回避法
- 借り換え後の住宅ローン比較では病気リスクの回避特典がある住宅ローンを重視する
- 借り換えのタイミングで「ライフプラン」や「老後への備え」を再度検討する
注意点その4.審査に落ちる可能性もある!
住宅ローンの借り換え審査では、新規借り入れ時と変わる部分も出てきます。
- 「物件の担保価値の下落幅」が「住宅ローンの返済スピード」よりも大きい
からです。
3000万円の新築物件も、一度中に入ってしまえば中古物件になってしまうので、この時点で価値は2000万円程度になってしまいます。しかし、住宅ローン残高は1ヶ月では1%も減っていないので、逆転現象が起こるのです。
結果として、住宅ローンの借り換え審査では
新規借り入れ時よりも
- 「収入(返済負担率)」
- 「勤続年数」
- 「住宅ローンの返済実績」
が重視されるのです。
新規借り入れ時と収入が同じでも、審査の重要度が上がっている分、借り換え審査に落ちてしまう可能性も出てしまいます。現在借入中の住宅ローンの返済遅延がある場合は、とくに審査に落ちやすくなってしまうので注意が必要です。
しかし、住宅ローンの借り換え審査は銀行ごとに審査基準が異なります。借り換えの場合は、新規借り入れ時と違って「引渡」のようなタイムリミットがあるわけでもありません。
借り換え先の住宅ローン審査に落ちたとしても、とくに気にする必要はなく、次の借り換え先の銀行を探せば良いのです。ただし、「借り換えをすること」が目的になってしまう方もいますが、あくまでも「借り換えメリットがあるから借り換えをする」ものですから、審査落ちによって条件の良い銀行がなくなってしまうのであれば借り換え自体を見送るのも一つの考え方です。
注意点の回避法
- 借り換え先の住宅ローン審査に落ちても、気にせず他の銀行を探す
- 条件が良い銀行がないのに無理して借り換えをするものではない
住宅ローン借り換え比較の手順
上記を踏まえて住宅ローンの借り換え比較の手順をおさらいします。
1.借り換えメリットを計算する
現在借入中の住宅ローンから
借り換え先の住宅ローンへ
借り替えることによって「総返済額がいくら軽減するのか?」を計算します。
- 借り換え諸費用の発生
- 金利低下による返済額の軽減
を考慮して、借り換えメリットを計算する必要があります。
借り換えメリットの計算は下記返済シミュレーションで簡単に計算できます。
2.手間コストを考慮する
新規借り入れで住宅ローンの借入経験があるので、お分かりになるかと思いますが、住宅ローンの契約手続きはかなりの手間です。
- 情報を集める
- 銀行に話をする
- 書類を集める
- 申込書を記入する
- 契約をする
- 登記を司法書士に依頼する
時間にして10時間~20時間ぐらいは借り換えで拘束されてしまうのです。
時給1000円の方なら、1万円~2万円分のコストですが
時給5000円の方なら、5万円~10万円分のコストです。
借り換えメリットが10万円しかないのに、10万円の時間的拘束があるのであれば借り換えをする意味はありません。
借り換えメリット - 手間コスト > 0円
になることを考慮する必要があります。
3.付加価値を考慮する
借り換えメリットが一番大きい銀行へ借り換えするのが最善の選択か?というとそうではありません。
前述したように
- 疾病保障無料付帯
- 介護保障無料付帯
- がん診断保障無料付帯
- コントロール返済可能
というようなサービスがあるのとないのでは、大きな違いです。借り換えメリットが二番目に大きい銀行が疾病保障無料付帯もあるのであれば「そちらの方が良い」という判断もあるのです。
これらの「病気リスク」軽減の特典は人によって価値が異なるので、自分なりの判断で決めれば良いでしょう。
4.借り換えの条件を再定義する
借り換えのタイミングでは
- 返済期間
- 毎月の返済額
を再度、決めることができます。
もう一度、ライフプランや家族の環境、老後への備えを考慮して、借り換え条件の変更の必要性があるかないかを検討しましょう。
借り換えの条件を変更した場合には、再度、変更した条件で「借り換えメリット」を計算しなおす必要があります。
5.借り換え先の住宅ローンの優先順位を決める
「借り換えしても良い」と思う借り換え先の住宅ローンに優先順位をつけます。
優先順位をつけて決めておけば1社目が落ちたときの次の対応がスムーズになります。2社、3社候補がある方もいれば、この銀行がダメなら借り換え自体をあきらめるという方もいます。
6.借り換え先の住宅ローンに申込む
7.借り換え実行
8.審査に落ちた場合、再度優先順位の高い候補の銀行へ借り換えを申込む
住宅ローン借り換え比較で重視すべき銀行の特徴
上記を踏まえて
住宅ローンの借り換え比較で重視すべき銀行というのは
- 低金利(保証料を含む金利)
- 借り換え専用の金利プランがある(低金利の可能性が高い)
- 現在借入中の金利タイプと同じ金利タイプが好条件の銀行
- 病気リスクへの特典が手厚い
- 借り換え諸費用が安い
- フラット35借入中の方はフラット35
住宅ローンの借り換え比較で重視する必要のないもの
- 銀行の知名度
- 現在借入中の金利タイプと別の金利タイプが好条件の銀行
- ○○ポイントやお得系キャンペーン
まとめ
住宅ローンの借り換えというのは、銀行の数だけ何度でもできるものです。しかし、何度も借り換えをする人はいません。それは、借り換えをするたびに諸費用が発生し、手間もかかるからです。多くても、住宅ローンの返済中に2回借り換えをするぐらいのものです。
借り換えの機会は、返済条件などを見直すことができる絶好のタイミングでもあります。
新規借り入れ時に作ったライフプランを常にチェックして、見直し、状況に合わせて編集して運用できる方はほとんどいないのですから、この借り換えのタイミングを有効活用する意味でも、今一度現状に即した、ライフプランを再度作り直すことをおすすめします。
単純に借り換えは「返済額が安くなる=お得」というものではなく、老後のこと、資産のこと、病気リスクのこと、子供の将来設計のこと、家族のプライベートの充実・・・様々なことを見直す良い機会として、住宅ローンの借り換えを活用することをおすすめします。
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- 住宅ローン借り換え比較, 回避法, 手順, 注意点