住宅ローンの変動金利には金利上昇リスクがあると言われています。では「金利が上昇するとどんなリスクがあるのでしょうか?」ここでは変動金利とリスクの関係について解説します。
住宅ローンにとっての最大のリスクは、返済不能になること
「リスク」という言葉の意味を考えると、最大のリスクは「金利が上昇すること」ではありません。「毎月の返済額が上昇すること」でもありません。
一番、回避しなければならないことは「住宅ローンの返済ができなくなって、マイホームを手放さなければならないこと」です。
それと比較すれば、多少返済額が増えて損をしても、大きなリスクとまでは言えないのではないでしょうか?
では、変動金利の金利が上昇することで返済ができなくなるケースというのはどういうケースなのでしょうか?
過去の変動金利の推移
1985年以降の住宅ローン関連の金利の推移です。
これを見ると、一番金利が高くなっているのは1992年前後のバブルと呼ばれる時代の金利です。
- 公定歩合(政策金利)が6.0%前後
- 銀行変動金利が8.5%前後
なので、実際の変動金利の優遇金利は6.5%~7.0%だと考えられます。
過去の例を見れば、一番最悪なケースで試算すれば、現在の変動金利の相場0.5%から6.5%ほどまで上昇する可能性があるということなのです。
たしかに、人口が増えていく時代の高度経済成長期からバブル期の状態には、人口が減っていく日本では逆立ちしても、戻らないという方もいます。実際に1995年から現在までの約20年間はほとんど金利は動いていないのです。
変動金利と金利上昇と毎月の返済額の関係
試算条件:借入3000万円、金利1.0%、借入期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なし
条件 | 変動前返済額 | 変動後返済額 | 総返済額 |
---|---|---|---|
金利変動なし | 84,686 | 84,686 | 35,567,792 |
10年後1.0%上昇 | 84,686 | 95,243 | 38,734,929 |
10年後2.0%上昇 | 84,686 | 106,81 | 42,147,883 |
10年後3.0%上昇 | 84,686 | 123,732 | 46,209,077 |
10年後4.0%上昇 | 84,686 | 148,448 | 51,173,355 |
10年後5.0%上昇 | 84,686 | 195,003 | 57,777,055 |
という結果です。金利が5.0%も上昇してしまえば、6.0%ということになるのでほぼバブル期の水準となります。
注目してほしいのは金利変動後の毎月の返済額です。金利変動がなければ月84,686円ですが、金利が上昇するにつれて毎月の返済額が増えていくことになります。ここでの変動後の返済額は変動金利には1.25倍ルールという5年ごとに毎月の返済額は1.25倍までしか増えないルールを設定した場合の最大になる毎月の返済額を表示しています。
つまり、日本にバブル時代のような好景気が表れて、金利が5.0%上昇して6.0%の変動金利になったと仮定し場合には、毎月の返済額が最大で195,003円になるということなのです。
逆に言えば、195,003円の返済ができるのであれば、総返済額が膨らんでしまうことはあるとしても、最悪のリスクである「マイホームを手放す」ことにはならないのです。
当然、このバブル時代が訪れるのであれば、給料も増えているはずです。
最悪のケースさえ想定しておけば、変動金利のリスクというものは無用に不安がるものでもないのです。
住宅ローンの返済負担率が重要
返済負担率というのは年収に対する1年間のローン返済の割合です。
平均的に25%が標準とされていますが、住宅ローン審査では35%までは許容ラインとなっています。
例えば、年収400万円の方が前述のシミュレーション通りに3000万円の借入をする場合、1年間のローン返済額は1,016,232円なので返済負担率は25.4%ということになります。
バブルと同じような超好景気が来て、年収が100万円上昇したが、金利は5.0%上昇したと仮定した場合
年収500万円 1年間のローン返済額2,340,036円(毎月195,003円) 返済負担率46.8%
という状態になります。返済負担率が46%というのはやや返済が困難になる数字です。50%を超えるとクレジットカードやカードローンなどの審査に通らない状態になるほどです。年収400万円で3000万円の借入を変動金利ですると、最悪のケースではマイホームを手放さなければならない可能性が出てきてしまうということになります。
仮に、3000万円でなく、返済負担率20%の2400万円の借入に抑えていたらどうでしょうか?
年収400万年 1年間のローン返済額 812,976円(毎月67,748円) 返済負担率20.3%
バブルと同じような超好景気が来て、年収が100万円上昇したが、金利は5.0%上昇したと仮定した場合
年収500万年 1年間のローン返済額1,872,012円(毎月156,001円) 返済負担率37.4%
返済負担率37.4%なら、新規の住宅ローン審査にも通るレベルなので、返済は継続することが可能です。マイホームを手放す必要はないのです。
つまり
はじめから返済負担率20%を目安に住宅ローンを借りているのであれば、変動金利で借り入れをしても、バブル時代のような超好景気が来て、金利が5.0%上昇したとしても、マイホームを手放す最悪の事態は回避できる
ということなのです。
当然、「人口が減る日本でバブル期のような超好景気なんて来ないよ。もっと借りていい物件が欲しい。」という方は、はじめから返済負担率25%でも、30%でも良いのですが・・・
「変動金利が不安で踏み切れない」という方の場合は、最悪のケースを想定したうえで、返済負担率20%をめどに住宅ローンを選んでおけば、マイホームを手放すということは避けられるので、安心して変動金利を選ぶことができるのではないでしょうか?
まとめ
住宅ローンの変動金利を利用することでの最悪の事態は「返済が継続できない=マイホームを手放す」ということです。
それを回避するためには「年収に対して借りすぎない」「最悪のケースをシミュレーションしておく」ということが重要なのです。目安は返済負担率20%と考えましょう。今後は、中古住宅や中古マンションの売買も活発になるため、返済負担率20%でも十分なスペックの住宅を手に入れることは可能です。
年収に対して、もっと借り入れを多くして高額な物件を手に入れたいという場合には
- 貯金をして頭金を増やす
- 変動金利ではなく、固定金利を選択する
- 変動金利の金利上昇リスクは目をつぶって、変動金利を選択する
という考え方があります。どれも間違えというわけではありませんので、自分の考え方に近いものを選ぶと良いでしょう。