住宅ローンの借り方の一つに「ペアローン」という収入合算の方法があります。ペアローンは夫も、妻も、別々にローン契約をするため、夫婦ともに住宅ローン減税の対象になります。ペアローンで夫婦ともに住宅ローン減税が受けてお得になるケースとは、どのような状況でしょうか?

住宅ローン減税の概要

住宅ローン控除・住宅ローン減税・住宅ローン関連税制/最新

住宅ローン減税の概要サマリー

平成26年4月~平成33年12月

  • 控除率:1.0%
  • 控除期間:10年間
  • 最大控除額:40万円 × 10年間 = 400万円
  • 住民税からの控除上限:13.65万円/年

所得税から控除できない分が、住民税から控除されます。

住宅ローン減税が「夫(妻)」単独で消化しきれないケースでペアローンがお得になる

年収別の所得税額

年収別の所得税額を概算で計算します。あくまでも「概算」です。

  • 社会保険料:14.22%
  • 基礎控除:38万円
  • 扶養控除:なし
  • その他控除は考慮せず
年収控除額所得税
200万円55.6万円 x 5% – 0円2.78万円
300万円111万円 x 5% – 0円5.57万円
400万円171万円 x 5% – 0円8.56万円
500万円237万円 x 10% – 9.75万円13.9万円
600万円303万円 x 10% – 9.75万円20.5万円
700万円372万円 x 20% – 42.8万円31.7万円
800万円448万円 x 20% – 42.8万円46.9万円
900万円524万円 x 20% – 42.8万円62.0万円
1000万円599万円 x 20% – 42.8万円77.0万円

世帯主の年収の所得税:上記 + 住民税控除上限:13.65万円 < 住宅ローン残高 × 1.0%

を超えない状態であればペアローンがお得になります。

例えば

年収500万円の夫が3000万円の住宅ローンを組む場合

  • 所得税:13.9万円
  • 住民税の控除上限:13.65万円

控除できる金額合計:27.55万円

控除額

  • 3000万円 × 1.0% = 30万円

30万円 - 27.55万円 = 2.45万円

2.45万円分住宅ローン減税を使いきれていない

ということになります。

しかし、ここで気をつけなければならないのは

住宅ローン減税は

  • 住宅ローン残高が返済が進めことによって小さくなれば、減税額も小さくなる
  • ペアローンは登記費用・印紙代が2倍になる
  • 出世などで年収が上がれば所得税が増える(使い切れる控除額が増える)

ということです。

登記費用、印紙代が2倍だと+10万円ぐらいの費用負担だと考えれば、前述した例の場合は1年2.45万円のお得ですが、5年も返済すれば夫だけの単独の年収で住宅ローン減税枠は使い切れてしまうのです。

前述した例では、ペアローンにしたところで住宅ローン減税によるお得はほとんどないことになります。

ペアローンでお得になる年収早見表

住宅ローン借入額ペアローンでお得になる年収
4000万円超物件額が4000万円を超えると年収にかかわらずペアローンでお得になる可能性あり
4000万円夫婦の高い方の年収が600万円以下ならペアローンでお得になる可能性あり
3500万円夫婦の高い方の年収が500万円以下ならペアローンでお得になる可能性あり
3000万円夫婦の高い方の年収が400万円以下ならペアローンでお得になる可能性あり
2500万円夫婦の高い方の年収が300万円以下ならペアローンでお得になる可能性あり
2000万円夫婦の高い方の年収が200万円以下ならペアローンでお得になる可能性あり

年収が高額であればあるほど、わざわざペアローンにしなくても、支払っている所得税と住民税が高いので、住宅ローン減税の減税枠はフルに使い切れる計算になります。

ただし、住宅ローンの借入額が4000万円を超えている場合は、単独で住宅ローン減税を受けても、その上限が4000万円ですので、使いきれていません。

例えば

物件価格6000万円 → 夫4000万円のローン + 妻2000万円のローン

とすることで、年収にかかわらずペアローンを利用した方がお得ということになります。

住宅ローン額が4000万円を超える場合は、年収に関わらずペアローンにした方が住宅ローン減税額が増えるのでお得になる可能性が高いのです。

まとめ

ペアローンにして夫婦ともに住宅ローン減税を受けるべきか?悩んでいる方は上記の早見表をチェックして

お得になりそうであれば

  • 住宅ローン減税額(10年間の返済による残高減を考慮した減税額)
  • ご自身の所得税額
  • 配偶者の所得税額
  • ペアローンにしたときのコスト増(登記費用などが倍になる金額)

を10年分試算して「本当にお得になるのか?」詳細なシミュレーションをしてみることをおすすめします。

お得になる金額がわずかでペアローンにする理由が特にないのであれば、わざわざローン契約が2重になり、諸費用も増えるペアローンを選ぶ必要はありません。