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「住宅ローン減税があるから住宅ローン減税が適用される10年間は繰り上げ返済はしない方が良い」と思っている方が少なくありません。
住宅ローンに詳しくない人が書いた本にすら、このようなことがかかれていることが珍しくありません。
しかし、これは全くのデタラメなのです。騙されてはいけません。
では、なぜ「住宅ローン減税があるから繰り上げ返済はしない」というのがデタラメなのか?きちんと試算したうえで検証してみたいと思います。
住宅ローン減税というものはどういうもの?
住宅ローン減税というのは、平成21年度税制改正から政府が景気刺激策の一環として住宅市場を活性化するために、住宅購入者に対して行った政策のひとつなのです。
景気を向上させるには、住宅市場の向上が一番手っ取り早いため、実質的な負担軽減策を導入したということなのです。
内容としては
「住宅ローンの借入残高の1.0% × 10年間」を所得税から控除する
というものです。
一般住宅で居住年が平成26年4月~31年6月の方の場合は毎年40万円(10年で400万円)が最大控除額になります。
この借入残高の1.0%が控除されるという制度が
「じゃあ、借入残高は多い借り方が控除額が多くなるんだ。」
という誤解を与えてしまっているのです。
正確に言えば、借入残高は多い借り方が控除額が多くなるはその通りなのですが、繰り上げ返済をする場合にはそれ以外の部分にも目を向けて、総合的にお得度を考える必要があるのです。
「繰り上げ返済なし」+「住宅ローン減税あり」の場合と「繰り上げ返済あり」+「住宅ローン減税あり」の場合の返済額負担を試算して比較
検証:繰り上げ返済あり・なしでの返済額負担比較
条件1:繰り上げ返済なし、3000万円、35年借入、金利1.0%(金利変動なし)の場合
居住年:平成26年度4月~29年度12月(2014年4月~2017年12月)一般住宅
年 | 元金残高 | 最大控除・減税額 |
---|---|---|
2015年(平成27年) | 29,581,155 | 295,811 |
2016年(平成28年) | 28,857,428 | 288,574 |
2017年(平成29年) | 28,126,432 | 281,264 |
2018年(平成30年) | 27,388,092 | 273,880 |
2019年(平成31年) | 26,642,333 | 266,423 |
2020年(平成32年) | 25,889,083 | 258,890 |
2021年(平成33年) | 25,128,269 | 251,282 |
2023年(平成34年) | 24,359,811 | 243,598 |
2023年(平成35年) | 23,583,633 | 235,836 |
2024年(平成36年) | 22,799,657 | 227,996 |
合計 | - | 2,623,554 |
元金 | 30,000,000 |
---|---|
利息 | 5,567,795 |
支払合計 | 35,567,795 |
最大月額 | 84,686 |
支払期間 | 35年0ヶ月 |
条件2:繰り上げ返済あり(毎月1万円)、3000万円、35年借入、金利1.0%(金利変動なし)の場合
居住年:平成26年度4月~29年度12月(2014年4月~2017年12月)一般住宅
毎月1万円、期間短縮型の繰り上げ返済した場合
年 | 元金残高 | 最大控除・減税額 |
---|---|---|
2015年(平成27年) | 29,507,976 | 295,079 |
2016年(平成28年) | 28,640,619 | 286,406 |
2017年(平成29年) | 27,740,841 | 277,408 |
2018年(平成30年) | 26,805,643 | 268,056 |
2019年(平成31年) | 25,831,504 | 258,315 |
2020年(平成32年) | 24,814,238 | 248,142 |
2021年(平成33年) | 23,748,790 | 237,487 |
2023年(平成34年) | 22,628,972 | 226,289 |
2023年(平成35年) | 21,447,034 | 214,470 |
2024年(平成36年) | 20,193,052 | 201,930 |
合計 | - | 2,513,582 |
元金 | 30,000,000 |
---|---|
利息 | 4,860,131 |
支払合計 | 34,860,131 |
最大月額 | 84,686 + 10,000(繰り上げ分) |
支払期間 | 30年9ヶ月 |
結果
住宅ローン減税による所得税の控除額は
- 繰り上げ返済なし : 2,623,554円
- 繰り上げ返済あり(月1万円) : 2,513,582円
繰り上げ返済なしの方が「109,972円」控除額が多くなる
支払利息は
- 繰り上げ返済なし : 5,567,795円
- 繰り上げ返済あり(月1万円) : 4,860,131円
繰り上げ返済ありの方が完済までの支払利息は「707,664円」安くなる
考察
住宅ローン減税の控除額の違いよりも、繰り上げ返済による利息支払いの減額効果の方が大きい!
前述の結果を見れば一目瞭然で
- 繰り上げ返済なしの方が「109,972円」控除額が多くなる
- 繰り上げ返済ありの方が完済までの支払利息は「707,664円」安くなる
ということは、繰り上げ返済ありの方が「597,692円」お得だということになるのです。
理由は簡単で
住宅ローン減税の1.0%よりも、繰り上げ返済をすることで元本を早く減らして完済までの支払利息の総額を引き下げる効果の方が大きい
ということなのです。
住宅ローンは借入残高に対して金利分の利息が発生します。金利1.0%(年率)の場合、住宅ローン減税の1.0%と同じため、損得が同じように感じてしまいますが、住宅ローンの返済は30年~35年と住宅ローン減税の10年よりも長期スパンになるため、元本を早めに減らしておいた方が30年~35年間分の利息が少なくなるメリットが大きいのです。
前述の試算では毎月1万円の繰り上げ返済にしていますが、これが1,000円で試算しても同じ結果になります。少なくとも、住宅ローン減税の適用割合が1.0%のままであれば、繰り上げ返済の方が断然お得なのです。
まとめ
住宅ローン減税よりも、住宅ローンの繰り上げ返済による支払利息の減額効果の方が大きいため、住宅ローン減税に気を取られずにできるだけ繰り上げ返済をする方がお得になる
のです。
住宅ローンの噂や人づてに聞いたことを鵜のみにせずに、実際に試算してみることが重要です。