住宅ローンでは借りられるは収入に対する倍率で決まってきます。夫だけの収入では借りられる金額が少なくなってしまうケースも多く、この場合、夫婦の収入を合算して住宅ローンを組むことでより大きな金額を借りることができるのです。今回はこの収入合算の方法である「連帯債務・連帯保証・ペアローン」について手って比較します。
収入合算とは?
住宅ローンで借りられる金額は収入に応じて決まる
住宅ローンには年収倍率という考え方があり、収入に応じて借りられる金額の最大値が決まってきます。
一般的には年収の6倍が借りられる金額です。
- 年収300万円 → 1800万円
- 年収400万円 → 2400万円
- 年収500万円 → 3000万円
しかし、夫の年収300万円、妻の年収250万円の世帯の場合には夫の年収と妻の年収を合算して住宅ローンを借りることができます。
- 夫年収300万円 + 妻年収250万円 → 3300万円
これが収入合算です。
上記のケースでは、夫一人で借りると最高1800万円の物件しか手に入らないことになってしまうので、都内であれば築年数20年ぐらいの中古物件以外は手が届きません。しかし、収入合算をすることでほぼ倍近い3300万円までの物件に手が届く形になるのです。3300万円であれば都内でも新築マンションも視野に入る状態です。
共働きの夫婦で収入合算をすれば、借りられる金額が増え、選べる物件の選択肢が広がるのです。
収入合算では妻も返済責任を負う
無条件で収入合算をしてしまえば、それは銀行にとって大きなリスクです。
貸せる金額は、あくまでも返済できる力(収入)によって決まるのです。
収入合算をするということは「合算する妻も返済責任を負う」ということを意味しているのです。
収入合算の種類
1.連帯債務
連帯債務とは
連帯債務とは、住宅ローンの借入額全額に対して、夫と妻がどちらも債務者になる(返済責任を負う)形の借入方法のことです。
3300万円の借入であれば、夫も妻も3300万円分の借金を背負うことになります。合計で6600万円になるわけではありません。あくまでも、同じ3300万円に対して同じ返済責任を負うということですので、返済していけば同じだけ借金は減る形になります。
連帯債務を取り扱っている金融機関
フラット35
妻の返済義務
金融機関は、妻に対して、いつでも返済を要求することができます。あくまでも夫と同じ返済責任を負っているため、妻も返済を請求される可能性があるのです。
住宅ローン控除
夫も、妻も、住宅ローン借入額に対して住宅ローン控除が適用されます。ただし、住宅ローン控除の対象金額の割合は、家屋や敷地の持分割合によって決まります。
団信
団信は主たる債務者に対してかけられます。ただし、団信特約料が2名分の2倍ではなく約1.56倍となる割引制度「デュエット」を利用すれば夫婦ともに団信をかけられるため、どちらかが亡くなった場合に残った住宅ローンの残債は保険金で支払われます。
メリット
- 収入合算ができること
- 住宅ローン控除が夫婦ともに利用できること
- 団信も特約料がやや増えるが夫婦ともに利用できること
- ペアローンと違って契約は一つなので諸費用負担は変わらない
デメリット
- 取り扱っているのがフラット35のみ。民間銀行はほぼ取扱せず
- 夫婦ともに返済義務が発生すること
2.連帯保証
連帯保証とは
連帯保証というのは、夫が住宅ローンを借りて、妻がその連帯保証人になる住宅ローンの借り方のことを言います。一般的に住宅ローンでは物件という担保があるため、信用力が著しく低くなければ連帯保証人は不要ですが、妻が連帯保証人になることで妻の収入分も、合算することができます。
連帯保証を取り扱っている金融機関
民間銀行
妻の返済義務
連帯保証人というのは単なる保証人と違って、いつでも金融機関から返済を求められる可能性があります。(保証人であれば「先に債務者に返済を請求してよ。」と言えるのですが、連帯保証人にはその権利はないのです。)しかし、住宅ローンの場合は、通常は夫が返済できなくなった場合に連帯保証人である妻に請求が行く形になります。夫が返済できない場合に妻が返済する義務があるのです。
住宅ローン控除
連帯保証人は債務者ではないため、住宅ローン控除の対象にはなりません。夫のみが住宅ローン控除の対象となります。
団信
団信も、住宅ローン控除と同じように夫のみに対してかけられます。妻は連帯保証人ですので団信の対象にはなりません。
メリット
- 収入合算ができること
- 妻は債務者にならずに済む。連帯債務よりは返済義務が軽い(ただし、返済義務があることに変わりはない)
- ペアローンと違って契約は一つなので諸費用負担は変わらない
デメリット
- 住宅ローン控除の対象は夫のみ
- 団信の対象は夫のみ
- フラット35は選べない
3.ペアローン
ペアローンとは
ペアローンというのは、一つの物件に対して、夫婦が別々にローン契約をして住宅ローンを借りる方法のことです。3300万円の物件なら、夫が1800万円分のローン契約、妻が1500万円のローン契約という形になり、お互いに連帯保証人になるものです。ローン契約が2本走るので、抵当権の設定、司法書士報酬などの費用が2倍になります。(事務手数料などは変わりません。)
連帯保証を取り扱っている金融機関
民間銀行
妻の返済義務
妻もローン契約の主たる債務者になるため、自分が契約したローン契約の金額分は返済義務が発生します。また、夫のローン契約の連帯保証人にもなるため、夫のローン契約の返済義務も発生します。
住宅ローン控除
夫婦ともに主たる債務者になるため、各々が負担した金額分は住宅ローン控除の対象となります。
団信
夫婦ともに主たる債務者になるため、各々が負担した金額分は団信の対象となります。
メリット
- 収入合算ができること
- 住宅ローン控除が夫婦ともに利用できること
- 団信が夫婦ともに利用できる。かつ民間銀行であれば団信料が無料
- 違う金利タイプの住宅ローンを組み合わせられる
デメリット
- 抵当権の設定費用、司法書士報酬などが2倍必要になる
- フラット35は選べない
「連帯債務・連帯保証・ペアローン」比較
収入合算の種類 | 収入合算なし | 連帯債務 | 連帯保証 | ペアローン | |
---|---|---|---|---|---|
取扱金融機関 | フラット35・民間 | フラット35 | 民間銀行 | 民間銀行 | |
名義 | 夫 | 夫婦共同 | 債務者のみ | 別々のローン | |
債務者 | 夫 | 夫・妻 | 夫 | 夫・妻 | |
返済責任 | 夫 | 債務者 | 債務者(主たる債務者) | 債務者 | 債務者かつ妻の連帯保証人 |
妻 | – | 債務者(連帯) ※同じ返済責任を負う | 連帯保証人 ※債務者が返済できない場合に返済責任を負う | 債務者かつ夫の連帯保証人 | |
住宅ローン控除 | 夫 | ○ | ○(持分割合) | ○ | ○(夫借入額分) |
妻 | × | ○(持分割合) | × | ○(妻借入額分) | |
団信 | 夫 | ○ | ○ | ○ | ○(夫借入額分) |
妻 | × | △一部可能な商品あり | × | ○(妻借入額分) | |
所有権 | 夫 | ○ | ○ | ○ | ○ |
妻 | × | ○ | × | ○ | |
諸費用 | – | 1つ | 1つ | 2つのローン分発生 | |
メリット | ・返済の責任は夫のみ。妻は関係なし | ・収入合算ができること ・住宅ローン控除が夫婦ともに利用できること ・団信も特約料がやや増えるが夫婦ともに利用できること ・ペアローンと違って契約は一つなので諸費用負担は変わらない | ・収入合算ができること ・妻は債務者にならずに済む。連帯債務よりは返済義務が軽い ・ペアローンと違って契約は一つなので諸費用負担は変わらない | ・収入合算ができること ・住宅ローン控除が夫婦ともに利用できること ・団信が夫婦ともに利用できる。かつ民間銀行であれば団信料が無料 ・違う金利タイプの住宅ローンを組み合わせられる | |
デメリット | ・夫の収入分の借入しかできない。 ・住宅ローン控除も夫の収入のみ ・団信も夫のみ | ・取り扱っているのがフラット35のみ。民間銀行はほぼ取扱せず ・夫婦ともに返済義務が発生すること | ・住宅ローン控除の対象は夫のみ ・団信の対象は夫のみ | ・抵当権の設定費用、司法書士報酬などが2倍必要になる |
収入合算の方法のおすすめはどれ?
どれがおすすめかは、借りる金融機関と住宅ローン控除の扱いで決まってきます。
民間銀行で借りる場合
妻の収入が大きく、住宅ローン控除を利用したい
(増える諸費用分が妻の住宅ローン控除でカバーできる)
→ ペアローン
妻の収入が少なく、住宅ローン控除は利用しなくても良い
→ 連帯保証
フラット35で借りる場合
→ 連帯債務
まとめ
執筆時点の2017年の物件価格はマンション、戸建てともに上昇している環境にあります。給料が上がっていないのにもかかわらず、物件価格が上昇している局面では、夫婦の収入合算というのは大きな選択肢であることは間違えありません。
収入合算の方法別のメリットデメリットをよく理解したうえで住宅ローンを比較検討しましょう。