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平成29年度(2017年度)の税制改正で4月から新年度の予算が適用されます。住宅関連の予算はそれほど大きな変動はありませんでしたが、その中でも注目されているのが「「フラット35子育て支援型」」です。「フラット35子育て支援型」の内容を解説します。

「フラット35子育て支援型」とは?

「フラット35子育て支援型」とは

子育てに積極的な方にフラット35の金利を当初5年間、年0.25%の金利引下げる優遇プランのこと

です。

「フラット35子育て支援型」が今年度予算から導入された背景

政府は希望出生率1.8を目指しています。

ご存じの通りで出生数は

  • 2015年:100万5677人
  • 2016年:98万~99万人程度になる見通し

となり、1899年の統計依頼はじめて100万人を割り込む見通しとなっています。

出生率も

出典:朝日新聞デジタル

2015年はやや上昇したものの、1.46という数字になっています。

人口が減少すれば、経済は停滞し不景気が続いてしまうので、政府としても、なんとか子育てを支援して人口を増やし、景気の後退をとどめなければならない国策となっているのです。

平成29年度(2017年度)の国土交通省の予算編成でも、子育て支援という項目を一番上位に持ってくる形となっているのです。

子育て世帯の住まい状況の調査データ

希望する居住形態

約6割の子育て世帯が「持家戸建て」を希望
約2割の子育て世帯が「持家マンション」を希望
賃貸で良いと回答したのは約2割

子育て世帯の住宅の種類

子供0~4歳の子育て世帯の持家比率は56.4%
子供5~9歳の子育て世帯の持家比率は70.6%

住み替え・改善の意向がない理由

1位は預貯金や返済能力の不足
2位は支払い可能な額の範囲で気に行った住宅がない

30歳代の平均年収推移

子育て世帯の中心となる30代の平均年収は低下の一途

マンション価格推移

アベノミクスによる物件価格の増加は顕著

出典:国土交通省住宅局

調査データ上も

  • 子育て世帯の8割が持家を希望しているが、実際は5割~7割に留まっている
  • 持ち家が買えない理由は預貯金や返済能力不足
  • 年収は下がり、物件価格は上がる状態

という環境があり、これが出生数の減少の大きな要因になっているのは明らかなのです。

「フラット35子育て支援型」の制度概要

制度概要

地方公共団体と住宅金融支援機構が協定を締結してフラット35の当初一定期間の金利を引き下げる制度です。

当初5年間 -0.25%の金利引き下げ

重要なポイント

  • フラット35S
  • フラット35リノベ

併用が可能です。

事業イメージ

金利引き下げイメージ

例:ARUHIフラット35

「フラット35子育て支援型」単独の場合

当初5年間:-0.25%

「フラット35子育て支援型」+「フラット35S」併用の場合

金利Aプラン

当初5年間:-0.55%
6年目~10年目:-0.30%

金利Bプラン

当初5年間:-0.55%

「フラット35子育て支援型」+「フラット35リノベ」併用の場合

金利Aプラン

当初10年の金利引き下げ:-0.60% → 当初12年に延長

金利Bプラン

当初5年の金利引き下げ:-0.60% → 当初7年に延長

2017年4月金利の場合

通常のフラット35金利(21年~35年)(融資額90%以下)

1.12%

「フラット35子育て支援型」単独の場合

当初5年間:0.87%

「フラット35子育て支援型」+「フラット35S」併用の場合

金利Aプラン

当初5年間:0.57%
6年目~10年目:0.82%

金利Bプラン

当初5年間:0.57%

「フラット35子育て支援型」+「フラット35リノベ」併用の場合

金利Aプラン

当初12年間:0.52%

金利Bプラン

当初7年間:0.52%

利用条件

1.お住まいの地方公共団体が、住宅金融支援機構と協定を締結していること。

「フラット35子育て支援型」は地方公共団体とフラット35を提供する住宅金融支援機構がタッグで提供する金融支援になります。そのため、お住まいの地方公共団体がフラット35と「フラット35子育て支援型」に関する協定を結んでいなければ利用できないのです。

住宅金融支援機構は、地方公共団体に対して公募を行っています。すべての地方公共団体が協定を締結できるわけではなく

  • 事業を実施する地方公共団体において、計画・方針に基づき、保育の受け皿の整備等の子育て支援を積極的に実施していること。
  • 地方公共団体において、住宅の建設又は購入に対して、一定の補助金等の財政支援を行うものであること。
  • 機構に設置された有識者委員会において、事業内容が適切であると認められたものであること。

という要件に該当した地方公共団体が協定を締結できるものとなっています。お住まいの地方公共団体が「フラット35子育て支援型」の協定を締結しているのか?締結しようとしているのか?については地方公共団体に問い合わせてみましょう。

2.審査完了後、速やかにお住まいの地方公共団体が発行する「フラット35子育て支援型・地域活性化型利用対象証明書」を契約面談時までに提出できる方

3.フラット35子育て支援型の受付期間中に借り入れの申し込みを行った方

フラット35子育て支援型も予算枠があるので、予算枠がいっぱいになった段階で終了してしまいます。早期の申込みが重要になります。

お申し込みの手順

  1. お住まいの地方公共団体が「フラット35子育て支援型」の協定を締結しているか?締結しようとしているか?を確認する。
  2. 「フラット35子育て支援型」を提供している銀行へ申込む

フラット35金利比較

「フラット35子育て支援型」のメリット

全期間固定金利なのに変動金利よりも低金利になる!

全期間固定金利で金利上昇リスクがないのにもかかわらず

2017年4月時点の金利では、フラット35Sと併用すれば

0.57%

という超低金利になります。

住宅ローン減税もあるので、完全に逆ザヤ(利息負担よりも、減税効果によるメリットの方が大きい)状態になります。

変動金利が0.5%前後で各ネット銀行がしのぎを削っているところを見ても、大幅に低金利を享受できることになります。

当初5年間という期間限定ですが、借入当初の子供が小さい、お金がかかる時期の返済負担が小さいこともメリットと言えます。

フラット35S、フラット35リノベと併用が可能!

上記の金利も、フラット35Sと併用した想定の金利です。

「フラット35子育て支援型」は併用できるからこそ、大幅に金利が下げられるフラット35なのです。

地方公共団体は、子育て環境の整備や物件購入支援をしているところのみが利用可能

地方公共団体が「フラット35子育て支援型」を提供するためには

  • 保育の受け皿の整備等の子育て支援を積極的に実施していること
  • 住宅の建設又は購入に対して、一定の補助金等の財政支援を行うもの

という条件をクリアしている必要があります。

つまり、「フラット35子育て支援型」を利用するということは、その地域は子育て環境の整備に力を入れていて、住宅購入にも、補助金などの財政支援をしている可能性が高いことを意味します。二重のメリットがある可能性が高いのです。

「フラット35子育て支援型」の注意点

借り換えは利用不可

フラット35自体は借り換え利用が可能ですが、「フラット35子育て支援型」は借り換えでは利用することができません。新規借り入れのときの優遇プランであることに注意が必要です。

「フラット35子育て支援型」の返済額シミュレーション比較

「フラット35のみ」と「フラット35子育て支援型」+「フラット35S」金利Aプランを比較しました。

試算条件

  • 借入額:3000万円
  • 返済期間:35年
  • 金利:2017年4月金利
  • 借り入れ開始:2017年4月
項目フラット35「フラット35子育て支援型」
+「フラット35S」
金利Aプラン
差額
元金30,000,000円30,000,000円
利息6,276,793円5,047,795円1,228,998円
支払合計36,276,793円35,047,795円-1,228,998円
毎月の返済額:5年86,374円78,807円-7,567円
毎月の返済額:6年~10年86,374円81,718円-4,656円
毎月の返済額:11年~86,374円84,721円-1,653円
支払期間35年0ヶ月35年0ヶ月

約123万円も返済額が安くなる試算となりました。

当初金利が低金利なので、その分元本の減りも速く、11年目以降は同じ適用金利ですが返済額は1,653円安くなるのです。

まとめ

「フラット35子育て支援型」はフラット35を選ぶ方にとっては非常に重要な選択肢になります。利用できるかどうかはお住まいの地方公共団体によって異なりますが、利用できる地方公共団体も今後増えてくることが予測されます。お住まいの、住み予定の地方公共団体には積極的に問い合わせしてみましょう。