住宅金融支援機構のアンケート調査では当初固定金利を選んだ方の75.9%は10年以内に借り換えを行っているというデータがあります。当初固定金利は当初期間が優遇されていて、当初期間終了後が高い金利に変わる住宅ローンの金利タイプです。であるならば「当初期間が終わるタイミングで借り換えていけば、低金利の運用が固定金利に近い形でできるのでは?」と考えることもできるはずです。その方法の有効性を検証してみました。
当初固定金利は当初期間だけ優遇されている金利タイプ
当初固定金利というのは
- 当初期間(特約期間)は低金利
- 当初期間終了後(特約期間終了後)は高金利
に変わる金利タイプのことです。
金利の引き下げ幅が当初期間が大きく優遇され、当初期間終了後は小さくなるのです。
例えば
ネット専用住宅ローン適用金利 <当初引下げプラン>の場合
当初10年固定金利の基準金利からの引下げ幅
- 当初10年間:基準金利 -1.65%
- 当初期間終了後:基準金利 -0.65%
金利1.0%の上昇
三菱UFJ銀行のぐんとうれしい住宅ローンの場合
当初10年固定金利の基準金利からの引下げ幅
- 当初10年間:基準金利 -2.2%
- 当初期間終了後:基準金利 -1.4%
金利0.8%の上昇
となっています。住宅ローンによっては、当初期間と当初期間終了後の金利の引き下げ幅が変わらない住宅ローンもあるのですが、9割がたは上記のように当初期間終了後に「金利の引き下げ幅が小さくなる=金利が上昇する」形になっているのです。
また、当初期間終了後は自動的に変動金利になる仕組みになっています。当初固定金利をもう一度選ぶこともできますが、上記の通りで引き下げ幅が小さくなってしまうのです。
試算してみました。
試算条件
- 借入:3500万円
- 借入期間:30年
プラン1
- 住信SBIネット銀行<当初引下げプラン>の当初10年固定金利
- 10年目に借り換え
- auじぶん銀行:当初10年固定金利
- 10年目に借り換え
- イオン銀行:当初10年固定金利
プラン2
- 住信SBIネット銀行<通期引下げプラン>(当初期間終了後も金利が変わらないプラン)
- 10年目にもう一度10年固定金利に
- 10年目にもう一度10年固定金利に
検証の概要
「当初期間の金利が優遇されるタイプの当初10年固定金利で10年目の特約期間が終わるタイミングで借り換えた場合」と「ずっと引き下げ幅が変わらないタイプの当初10年固定金利で10年ごとに再度10年固定金利を選んだ場合」を比較しました。
10年目のタイミングでどちらも金利が見直されるのですが、同じタイミングでの金利見直しなので金利上昇は考慮せずに比較できます。
試算した時点の金利
住信SBIネット銀行<当初引下げプラン>:当初10年固定金利
- 当初期間:0.50%
- 当初期間終了後変動金利:0.975%(変動なしの場合)
auじぶん銀行:当初10年固定金利
- 当初期間:0.50%
- 当初期間終了後変動金利:1.541%(変動なしの場合)
イオン銀行:当初10年固定金利
- 当初期間:0.59%
- 当初期間終了後変動金利:0.87%(変動なしの場合)
住信SBIネット銀行<通期引下げプラン>:当初10年固定金利
- 当初期間:0.90%
- 当初期間終了後当初10年固定金利:0.90%(変動なしの場合)
プラン1
- 住信SBIネット銀行<当初引下げプラン>の当初10年固定金利
- 10年目に借り換え
- auじぶん銀行:当初10年固定金利
- 10年目に借り換え
- イオン銀行:当初10年固定金利
- 元金 30,000,000円
- 利息 2,360,811円
- 住信SBIネット銀行の10年月額 89,756円
- auじぶん銀行の10年月額 89,756円
- イオン銀行の10年月額 90,161円
2回の借り換え
- 1回目:残高20,414,342円 × 2.16% + 17万円(登記費用) = 610,950円
- 2回目:残高10,418,871円 × 2.16% + 17万円(登記費用) = 395,048円
2,360,811円 + 1,005,997円 = 3,366,808円
総返済額は33,366,808円
プラン2
- 住信SBIネット銀行<通期引下げプラン>(当初期間終了後も金利が変わらないプラン)
- 10年目にもう一度10年固定金利に
- 10年目にもう一度10年固定金利に
- 元金:30,000,000円
- 利息:4,243,025円
- 最大月額:95,120円
総返済額は34,243,025円
結果
プラン1:3,366,808円 < プラン2:4,243,025円
10年固定金利で借りる形を繰り返すのであれば、当初引き下げ型の当初10年固定金利を選んで借り換えを繰り返した方が総返済額は安くなる
という結果になりました。
はじめが優遇された金利の当初固定金利を選んだ場合には、当初期間終了後に借り換えを行った方がお得なのです。
この方法を実践するときの注意点
10年ずつは固定金利だが、10年の見直しタイミングでは金利上昇が反映される
この方法を使った場合は
30年の借入でも、10年ごとは固定金利で金利変動はありませんが、10年の切り替えタイミングでは金利がその時の基準金利をベースに見直されるため、金利上昇リスクが全くないわけではありません。
変動金利と比較すれば金利上昇リスクは小さくなりますが、
全期間固定金利と比較すると金利上昇リスクはあるということに注意が必要です。
借り換えで審査が通らない可能性もある
上記は10年ごとに2回住宅ローンの借り換えをする試算になっています。
とはいえ、借り換えの審査が通る保証というのはないのです。
- 会社が倒産してしまった。
- 欠陥住宅であり物件の価値が下がって借入額に見合わない。
- 病気になってしまった。
- ・・・など
借り換えを想定していたとしても、審査が通らない状況になってしまう可能性もゼロではありません。
まとめ
当初固定金利の特性として、当初期間が金利が優遇される形になります。当初のおいしい金利の時だけつまみ食いするように銀行を借り換えで変えていけば、返済負担が小さくなるのは試算からも明らかです。
しかし
- 全期間固定金利とは違い、金利上昇リスクはあること
- 借り換えの審査が10年後も通るとは限らないこと
など不確定要素はあるのです。
絶対の方法ではないという認識が必要ですが、選択肢に入れても良い返済方法だと考えられます。